藍の海のほとりで
山あいの小さな村に、藍染の名人と呼ばれる老いた女がいた。六十年、布を染めつづけてきた。村の人々は彼女の藍を「夜明け前の海」と呼び、その微かな濃淡を見分けることに誇りを持っていた。
ある秋の夕べ、見知らぬ旅人が宿を求めてきた。痩せた、穏やかな目をした人物で、代わりに「染めについて、一つの秘密を教えよう」と言った。老女は笑って受け入れた。六十年染めてきた者に、今さら何を教えるのだろう、と思ったのだ。
翌朝、旅人は彼女を山の湖のほとりへ連れ出した。
「あなたの最も濃い藍と、最も淡い空色のあいだには、いくつの青がありますか」
「私の手が染め分けられる数だけ」と老女は答えた。
「いいえ」と旅人は言った。「無限にあります。そして、それらは、あなたが染めようが染めまいが、すでに存在しているのです」
老女は眉をひそめた。旅人は静かに続けた。
「あなたが好きな二つの藍を思い浮かべてください。その間の色を。さらに、その新しい色と最初の藍との間の色を。これをどこまでも続けてみてください」
老女は目を閉じた。一つ、また一つと、名のない青が心の中に現れた。いつまでも尽きることはなかった。
「あなたが染めるすべての青は、見えぬ海の中に、すでにあります。あなたの仕事は青を『作る』ことではなく、その海に手を伸ばし、ある一つの点を『取り出す』ことなのです」
旅人はその夜のうちに姿を消した。
数日、老女は染め場に立てなかった。自分が六十年やってきたことは、いったい何だったのか。
やがて彼女は再び染め始めた。しかし以前とは違った。「この藍を作ろう」とは、もう思わなかった。「この藍まで歩いていこう」と思った。ある藍と別の藍のあいだを、彼女はゆっくりと辿るようになった。道はずっとそこにあったのだ。ただ、彼女はそれを「道」として見ていなかっただけだった。
数年後、若い弟子が尋ねた。
「師匠、どの藍がいちばん美しいのでしょうか」
「すべての藍はすでにある。美しさとは、その中をどう歩くかだ」
「では、私たちに残されているものは何ですか」
「選ぶ手であること。どの道を行くかを知る者であること」
さらに年月が流れた。老女はもう染め場に立てなくなっていたが、弟子は気づいていた。師が最後の日々に歩いていたのは、もはや青と青のあいだだけではなかった。青と緑のあいだ、緑と、まだ名のない色合いのあいだ、織りの模様と、まだ誰も見たことのない模様のあいだ──師は、色よりもはるかに広い、見えない空間のどこかを歩いていた。そこにはおそらく、あらゆる可能な布、あらゆる可能な意匠、あらゆる可能なデザインが、ただ取り出される者を待ちながら、すでに横たわっていたのだ。